「手洗い」のススメ@エチオピア
2010年10月    
ユニセフエチオピア事務所  
位田 和美    

 ユニセフ協会兵庫支部のみなさん、こんにちは。

この原稿を読まれているみなさんの中で、何人の方が「世界手洗いの日」がいつだか知っていらっしゃるでしょう
か。数ある担当業務の中で、私が最も力を入れているのが「手洗い」の推進なのです。

 日本では小学一年生でも知っていて、実行している「手洗い」の推進と聞くと、いたって簡単に思えるかもしれ
ませんが、実は、すごい効果を持つのです。実に、全世界の5歳以下の子供たちの死因、罹患率ナンバー5に入る
下痢の40%以上、肺炎の23%が、トイレの後や食事前、調理前の石鹸での手洗いで予防できるのです。ところが、
エチオピアをはじめとする サブサハラアフリカ では、水自体が非常に貴重です。季節によっては飲み水の確保も
ままならない中、「手洗い」にふんだんに水を使うことは問題外です。そして、石鹸も高価なものとして捉えられ
ており、洗濯や食器洗いに石鹸が使われているものの、なかなか度々の「手洗い」には使われないことが多いので
す。このような状況を感覚では理解していながら、実際になぜ人々が手を洗わないのか、洗えないのか、どうすれ
ば効果的に手洗いを推進できるか、は意外に知られていません。

 そこで、ユニセフエチオピア事務所が保健省や水利省、教育省に働き
かけ、まずは 手洗いの実態に 関する質的・量的調査を実施することに
なりました。調査の結果、 何がボトルネックになっているのか、 誰に
どう働きかければ最も効果的に行動変容が起こりえるのか、が明らかに
なりました。幸い、時を同じくして、10月15日の「世界手洗いの日」の
準備が着々を進められていたので、 本調査結果の発表を エチオピアの
「世界手洗いの日」の プレ・イベント 第一弾として 設定 しました。
各セクターから70人近くの政府関係者、警察官、NGOパートナー、
メディア、女性グループの代表者が集い、調査結果を吟味し、各機関で
の手洗い 推進の ための 約束を とりつけました。 そして、 翌週には
エチオピア全11週で同様のワークショップが開かれ、調査結果を全国的
に発表でき、また、各州の課題に見合ったアクション・ポイントも合意
されました。

手洗いのススメ


 プレ・イベント第二弾は、同様のワークショップながら、エチオピア
全土にくまなく張り巡らされた、宗教ネットワークの代表者の会合でし
た。 「宗教大国」とも言える エチオピア では、各位が 非常に敬虔な
クリスティアン あるいはムスリムです。教会や モスクからのお祈りが
日常茶飯事に聞こえてくる お国柄なのです。そこで、この 巨大ネット
ワークを活用しない手はありません。NGOや関係各位の協力をあおぎ
つつ 数ある宗教ネットワークでも代表的なもの(オーソドックスクリス
ティアン、カソリック、ムスリム)の 宗教指導者の参加を得、誰しもが
想像した以上のインパクトを持って会合を終えることができました。

手洗いのススメ


 プレ・イベント第三弾は・・・・・・ そう、 子供たちの最も身近な存在、
お母さんたちの会合でした。400人以上の女性リーダーたちが集い、
石鹸での手洗いの実践がいかに 子供たちの健康に 帰するのか、簡単で
費用も要らない、とっても効率的で今すぐ誰でも実施できる予防活動で
あるのか、を改めて知ってもらい、 女性リーダー各位が 自身の家庭、
コミュニティで メッセージ を伝えるよう約束をとりつけました。日本
でも、おばちゃんたちの口コミはあなどれませんよね。

 エチオピアでも、上記調査結果からも同様のことが判明しています。
このように、プレ・イベントでは、対象者別に手洗いのアドボカシーを
実施しました。そして、「世界手洗いの日」当日。事前に何度も何度も
下見を繰り返した小学校で、小学生による「手洗いの歌」の合唱で幕は
開けました。

手洗いのススメ


 この日、初めてのイベントとなった新ユニセフ大使 のアステル・アウェク(エチオピアの女性有名歌手)が小学生
たちの歓迎を見た途端、涙を流すほど、一所懸命準備され、関係者各位 と 子供たちが 一体となったイベントでし
た。当日は、各機関からのスピーチあり(スピーチの数が関係機関の多さを示すほど。。 良くも悪くも)、子供たち
による歌あり、劇あり、伝統的踊りあり、組み立て体操あり、とカラフルで盛りだくさんな半日でした。 そして、
締めくくりは子供たち、来場者全員による「手洗い」。ポータブルな 手洗い セット を持った小学生たちが会場を
まわり、皆に石鹸での手洗いを勧めました。もちろん、デザートのクッキーとドリンクは皆が 手を洗った後で振舞
われました。

手洗いのススメ 手洗いのススメ 手洗いのススメ


 「世界手洗いの日」後。 一番の課題は、この素晴らしい パートナーシップ をいかに維持し、拡張していくか、
です。今年のエチオピアの特徴は、政府関係者、警察、軍隊、NGO、女性グループ、宗教団体がいつになく積極的に
関わっていることです。 これも、シンプル な 「手洗い」 の推進だからこそ。「手洗いのススメ」を 皮切りに、
これらのパートナーシップをいかに恒常的なものにしていくか。まずは、これら関係者 すべてを巻き込んで、調査
結果をベースにした、手洗い推進のコミュニケーション戦略を立てているところです。 関係各位がそれぞれの強み
を要していて、これからのエチオピアの「手洗い」推進はわくわくし通し間違いなしです。

 ユニセフだからこそ、関係各位の得手不得手を見極め、ひとつのムーブメントとしてまとめ、具体的なアクション
に落としていけるのです。シンプルな手洗いのススメと言えども、セクター横断のダイナミックな活動だと肌で感じ
ています。